【最新版】人材紹介の基本契約書と必要書類を徹底解説
人材紹介業を行う際は、人材紹介報酬や返金規定などを決める「人材紹介基本契約書」が必要です。

スムーズに事業運営するためには、「求人ヒアリングシート」や求職者に募集内容を説明する際の「求人票」などの書類も準備しておきましょう。

今回は、人材紹介業で使うさまざまな書類の使い方、無料ひな形(フォーマット)を紹介します。契約書などを作成、使用するときの注意点もあわせて確認してください。

人材紹介業に必要な5つの契約書・書類の役割を紹介

契約書

人材紹介業を行うときは、「有料職業紹介(人材紹介)基本契約書」という契約書類を1番はじめに準備します。

今回は事業運営に役立つよう、よく使う書類として 「求人ヒアリングシート」「求人票」「求職者ヒアリングシート」「見積書」についてもご紹介します。

それぞれの書類の役割や使用用途を詳しく解説していきます。

1.有料職業紹介基本契約書

有料職業紹介基本契約書は、人材紹介会社と人材を紹介する求人企業のあいだで結ぶ契約書です。紹介手数料や返金規定、個人情報の取り扱いや契約期間などを記載します。「人材紹介基本契約書」とも呼ばれます。

▶使い方

人材紹介会社から求人企業へ提示し、内容に合意のうえ基本契約書を用いて契約を取り交わします。

▶重要度

人材紹介業を行う事業者は必ず用意します。

▶記載内容

主な記載項目は以下の通りです。

  • 契約者名
  • 人材紹介会社へ採用募集活動を委託する旨
  • 報酬額(紹介手数料、紹介フィーなどと呼ばれ、採用者の理論年収35%前後で設定することが多い)、報酬計算式、報酬発生日
  • 返還金の規定(採用者が早期離職した場合の返金規定など)
  • 個人情報取り扱い、求人情報の開示ルールなど
  • 秘密保持義務
  • 不正競争防止
  • 損害賠償や違約金
  • 反社会的勢力の排除
  • 契約期間、更新について

有料職業紹介基本契約書のひな形と、作成時の注意点については記事の後半でくわしく解説します。

2.求人ヒアリングシート

求人ヒアリングシートとは、求人企業の人事担当者に募集要項や企業の特徴などをヒアリングするときに、内容をまとめるシートです。

求人募集の際は必ず求職者に提示しなければならない労働条件や、確認事項が多岐にわたります。 「必ず聞かなければならない項目」と、「可能であれば任意でヒアリングする項目」など、優先度を分けておくと使いやすいです。

▶使い方

人材紹介会社の営業担当(リクルーティングアドバイザー)が、求人企業と商談する際に、求人ヒアリングシートの項目に沿って募集要項を確認します。

▶重要度

求人ヒアリングシートの用意は任意です。

ヒアリングに慣れていないと確認漏れの項目が出たり、複数企業の募集情報の品質でばらつきが出たりすることもあります。創業期ほど、求人ヒアリングシートをあらかじめ用意すると便利です。

▶記載内容

募集活動の際に、必ず求職者に提示しなければならない項目(労働条件)は法令で決められています。必須項目は網羅しておくようにしましょう。

最低限明示しなければならない労働条件等

参考:厚生労働省『労働者を募集する企業の皆様へ』

また、任意でヒアリングすると役立つ内容例をご紹介します。

  • 募集背景
  • 過去の採用活動方法と課題
  • 今回はなぜ人材紹介を利用したいのか、人材紹介に期待すること
  • 募集ポジションの仕事内容、1日の流れ、仕事のミッション
  • 応募時に必要なスキルや経験、その理由 
  • 入社後の研修、キャリアパス など

▶注意点

求職者に提示しなければならない内容や、提示方法は時代にあわせて改正されることもあります。最新情報は厚生労働省ホームページで随時確認をしましょう。

▶ひな形ダウンロードはこちら

3.求人票

求人票とは、求人企業からヒアリングした労働条件や企業情報などをまとめ、求職者に提示する書類です。一般的に、1枚(多くても2枚)のコンパクトにまとめられたものがほとんどです。

求人ヒアリングシートは募集背景や採用予算、求人企業の今後の事業戦略など、幅広くヒアリングするための書類ですが、求人票は応募者に必要な情報のみをコンパクトにまとめた書類です。

▶使い方

人材紹介会社から求人票を求職者に提示し、企業説明を行って応募の案内をします。

▶重要度

人材紹介業を行う事業者は必ず用意します。

▶記載内容

求人票の主な記載内容は以下の通りです。

  • 人材紹介会社名、担当名(リクルーティングアドバイザーの名前など)
  • 求人企業名、企業ホームページ
  • 企業概要、事業内容、売上高
  • 就業場所
  • 試用期間有無
  • 募集職種
  • 仕事内容
  • 給与、待遇、休日休暇、福利厚生
  • 雇用形態、雇用期間

▶注意点

上記は最低限提示しなければならない労働条件が中心です。

上記の内容だけでは、求職者が応募を判断するには情報が不十分と思われる場合があります。独自にヒアリング・調査した情報を別途案内するようにしましょう。

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4.求職者ヒアリングシート

求職者ヒアリングシートとは、転職相談にきた求職者に今までの経歴や転職背景、転職先の希望条件などをヒアリングする際に使用する書類です。

求人ヒアリングシートと同様、求職者への質問事項も多岐にわたるため、あらかじめ質問内容を決めておくと聞き漏れがなく、面談がスムーズになります。

▶使い方

人材紹介会社の営業担当(キャリアアドバイザー)が、求人企業と商談する際に、求職者ヒアリングシートの項目に沿って面談を実施します。

▶重要度

求職者ヒアリングシートの用意は任意です。

話すことに慣れていない求職者も多く、転職相談でセンシティブになっている場合もあります。

面談の場をうまくコントロールしながら、必要情報を正確に聞き出すために求職者ヒアリングシートがあると便利です。

▶記載内容

主な記載内容は以下の通りです。取り扱う求人にあわせて、ヒアリングする内容は調整しましょう。

  • 氏名、年齢、性別
  • 連絡先
  • 過去の経歴(社名、在籍期間、職務内容など)
  • 保有スキル、資格
  • 今までの会社への就職理由、転職理由
  • 直近の年収
  • 直近の会社の残業時間
  • 転職先の希望条件(業種・職種・仕事内容・給与・休日休暇など)
  • 中長期スパンでの希望キャリアイメージ 
  • 現在の転職活動状況 など

▶注意点

採用面接の際は、本籍・家族・思想信条などの適性・能力に関係ない事項のヒアリングは、職業安定法で禁止されています。

質問NG項目は、以下から確認してください。

参考:厚生労働省『公正な採用選考のために』

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5.見積書

ここでの見積書とは、人材紹介契約を締結する前に報酬や返金規定、紹介可能な人材に関する情報などを記載し、求人企業に提示するための見積書類です。

人材紹介会社によって紹介費用や返金規定は異なるため、契約を結ぶ前に複数の人材紹介会社から見積りをとる求人企業もあります。

▶使い方

求人企業から求められたら、必要事項を記載してPDFなど編集不可の状態で見積書を送付します。

▶重要度

見積書の用意は任意です。ただし求人企業から求められる場合があるため、事前にフォーマットを用意しておくと安心です。

▶記載内容

主な記載内容は以下の通りです。

  • 紹介可能な人材について
  • 人材紹介に付随する提供サービス概要
  • 採用決定した際の紹介手数料
  • 入金日、入金方法
  • 返金規定 など

▶注意点

紹介手数料は理論年収の50%が上限となっています。実際の相場は30~35%であり、人材紹介業が増加していることから値崩れが起きているのも現状です。

自社の対応業界・職種の相場や、業界トレンドなどを見ながら、適切な価格を見極めるとよいでしょう。

▶ひな形ダウンロードはこちら

有料職業紹介基本契約書のひな型(テンプレート)と注意点

契約書と印鑑

今回ご紹介した書類の中でも、有料職業紹介基本契約書はひな形をそのまま使うのは危険です。

実用にあたりとくに注意したいポイント紹介します。

紹介手数料の金額

人材紹介業の手数料には、「受付手数料」「上限制手数料」「届出制手数料」「求職者手数料」があり、それぞれ徴収できる価格条件などが決められています。

多くの人材事業者は届出制手数料を使用しており、手数料額は「厚生労働大臣に届け出た手数料表の額」で徴収ができます。

届出すればいくらでも手数料をとれるわけではなく、50%が上限です。また、実際に50%で採択している事業者は少なく、相場は30%前後、10~20%など低く設定している事業者もあります。

参考:厚生労働省『手数料』

手数料の決め方については、以下の記事で詳しく説明しています。

人材紹介の手数料の決め方とは?手数料の概要や相場を紹介

紹介手数料の発生タイミング・早期離職時の返金規定

紹介手数料の発生タイミングは、人材紹介事業者によって異なります。

主に紹介した人材の内定日を起点に手数料発生とするケースと、入社日に手数料発生とするケースがあります。労働契約は口約束ではなく、書面で取り交わす必要があるので、企業と採用者が合意して結んだ労働契約書に記載されている入社日を基準にすると明確です。

また、紹介手数料の発生と同時に、返金規定についても決めなくてはなりません。

【返金規定例】

  • 入社後1週間で離職した場合…100%返金
  • 入社後1週間以上1か月未満で離職した場合…80%返金
  • 入社後1か月以上3か月未満で離職した場合…50%返金

上記のように、日数とパーセンテージを段階的に設定するのが一般的です。取引先企業によっては、半年間や1年などの長期にわたり返金規定を請求してくるケースもあるので、自社はどのように対応するか慎重に検討しましょう。

紹介した人材と直接接触を防止する罰則規定

人材紹介会社から紹介された人材に直接アプローチを行い、紹介会社を通さず採用しようとする悪質な企業も存在します。

人材紹介会社の報酬は、1回あたり百万円単位で高額となるため、このような不正行為をされると損害額も大きいです。

求人企業が紹介した人材と直接接触したときの罰則規定を設けておくと安心です。

企業側とのトラブルを未然に防止する方法については、以下で詳しく説明しています。

人材紹介で手数料が払われない!中抜きや未払いトラブル事例と対処法

求職者のオーナーシップ(所有権)

人材紹介会社が求人企業に人材を紹介してから、すぐに応募に至らなかった場合、紹介してから一定期間はその求職者のオーナーシップ(所有権)を持つことを規定しておきましょう。

人材紹介会社から紹介を受けたタイミングでは採用に至らなかったとしても、その後、別ルートで求人企業に応募して採用となる可能性はゼロではありません。

そのため、人材紹介会社がオーナーシップを保有している期間に採用に至ったら、紹介手数料を徴収できるよう、あらかじめ定めておくと良いでしょう。オーナーシップの期間は1年間が目安です。

個別契約書

個別契約書とは、一般派遣契約の際に使用する契約書です。

一般派遣の派遣料金や個人情報、機密保持など全体にかかる内容は基本契約書にまとめ、個別契約書は派遣先企業が派遣スタッフを受け入れるごとに法定記載事項などをまとめます。

人材紹介業の場合は、基本契約書のみで問題ありません。

締結方法(紙での契約と電子契約)

有料職業紹介基本契約書の締結の際は、書面契約と電子契約のどちらの手法をとるか、事前に決めておきましょう。

書面契約の場合、契約書を2部製本し、割印や捺印をして郵送をする手間がかかります。

有料職業紹介基本契約は電子化も対応できるので、可能な限り電子化対応で作業効率を上げるのがおすすめです。

基本契約書に収入印紙は必要?

人材紹介の契約は、印紙税法の課税物件に該当しないため収入印紙の貼り付けは不要です。基本契約書を結んだ時点では人材の紹介は確定しておらず、仕事の完成を約束できないためです。

参考:国税庁『印紙税』

参考:国税庁『請負の意義』

▶ひな形ダウンロードはこちら

本記事で紹介したひな形を利用する際の注意点

Exclamation Alarm Caution Warning Notification Mark Sign

本記事で紹介したひな形を利用する際には、2つの注意点があります。

リーガルチェックの必要性

本記事以外にも、インターネットで検索すればさまざまな無料のひな形書類が出てきます。

ひな形はとても便利なものですが、あくまでもサンプルと受け止めて、使用前には必ず顧問弁護士にリーガルチェックをしてもらいましょう。自社に合わせて調整した場合も同様です。

場合によっては、知らないうちに法令違反の内容の契約書を使用してしまい、罰則を受ける可能性もゼロではありません。

また、法令は時代にあわせて改正されることも多いので、利用の都度、法令に沿った内容かどうか確認が必要です。

自社オペレーションに合わせた仕様変更

本記事で紹介したひな形を、必ずしもそのまま使う必要はありません。リーガルチェックを終えたら、自社のオペレーションにあわせて仕様変更を行いましょう。

例えば、求職者に提示する求人票に参考画像や記事リンクなどを付け加えても問題ありません。求人ヒアリングシートは、お客様が直接書き込めるような仕様に変更してもいいでしょう。

今回は、人材紹介業に必要な5つの書類についてご紹介しました。

次のボタンから一括ダウンロードが可能です。

ぜひ活用してみてください。

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ーーー参考資料ーーー

厚生労働省『労働者を募集する企業の皆様へ』

厚生労働省『手数料』

国税庁『印紙税』

国税庁『請負の意義』