人材紹介と業務委託の違法性とは?
職業安定法の規定・違法のケースを紹介

人材紹介を行うときに業務委託で仕事を依頼したいものの、名義貸しにあたるか不安になっている方は多いのではないでしょうか?本記事では、人材紹介と業務委託にまつわる法律や、業務委託に発注する際の注意点についてまとめます。労働基準法や職業安定法を正しく理解し、適法に事業運営ができるよう、確認してみてください。

※本記事でご紹介する法律は執筆時点の内容です。法改正など最新情報は必ず厚生労働省や各自治体の情報をご確認ください。

また、人材紹介会社をこれから作る人にぜひ活用していただきたい、5つのデータサンプルを配布中です。見本としてご活用ください。

人材紹介会社の立ち上げに必要な
5つのツールを一括ダウンロード

人材紹介を業務委託で行うのは違法か?

違法と順法の境目

人材紹介業の仕事を、フリーランスや副業者などに業務委託契約で発注する行為は、「名義貸し」や「無免許での職業あっせん」に抵触する可能性が高いです。しかし、現状としては人材紹介会社が業務委託に発注する事例は増えていますし、求人サイトで「人材紹介 業務委託」などと検索すると、多数の該当求人がヒットします。

人材紹介会社が業務委託メンバーに仕事を任せて摘発されたというニュースはあまり聞かないものの、法律上禁止されているのは事実です。

次の章で、改めて職業安定法や人材紹介業にまつわる基礎知識を解説していきます。

人材紹介業とはそもそも何か、という点については、以下の記事で詳しく説明しています。

人材紹介業とは?ビジネスモデルや業種、利益率、開業方法を紹介

職業安定法や職業紹介の基礎知識

弁護士バッジイメージ

人材紹介の業務委託に違法性がある理由を理解するためには、周辺の法律知識が必要不可欠です。労働基準法で禁止されている中間搾取の排除、職業紹介事業の内容、名義貸しの意味について順に説明していきます。

1:中間搾取の排除

働く人の労働条件の最低基準を定めた労働基準法、第6条の「中間搾取の排除」という条文についてご説明します。

中間搾取の排除とは、簡単に言うとピンハネを禁止するという意味で、第3者が他人の就業に介入して利益を得てはいけないと定めた法律です。条文には「法律に基づいて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない」と記載されています。

「業として」とは、「反復継続して行うこと」と法律上解釈され、1回限りの行為でも反復継続する意思を持って行えば事業性があると判断されるのが押さえどころです。この解釈を勘違いすると、「継続して行わなければ無免許でも人材紹介できる」となってしまうため注意が必要です。

また、「法律に基づいて許される場合」には、無料・有料職業紹介の2種類があります。それぞれの概要を確認していきましょう。

2:職業紹介事業とは

労働基準法第6条の「法律に基づいて許される場合」とは、国が認める無料・有料職業紹介事業を指します。それぞれ免許を取得した者のみが、業として他人の就業に介入ができる、すなわち人材紹介(職業紹介)が行えるのです。

また、職業安定法では、「求人及び求職の申込みを受け、求人者と求職者との間における雇用関係の成立をあっせんすること」を職業紹介と定義しています。

・有料職業紹介

有料職業紹介とは営利目的かどうかに関わらず、手数料や報酬などの対価を受けて行う職業紹介を指します。港湾運送業と建設業のみ職業紹介が禁止されていますが、その他の業種は、厚生労働大臣から許可を得られれば紹介可能です。

免許は初回が3年間有効となり、その後5年ごとに更新を行います。免許は法人格を持たない個人事業主でも申請可能ですが、許可を受けるには財産的基礎(資本金500万円)、個人情報の管理、欠格事由に該当しないなど許可基準を満たす必要があります。

・無料職業紹介

無料職業紹介とは、いかなる名義でも手数料や報酬を徴収しない人材紹介を指します。例えば、学校等が行うもの、商工会議所や地方公共団体が行うものが挙げられます。

無料であっても、有料職業紹介と同様に財産的基礎や個人情報の管理体制、欠格事由不該当などの許可基準を満たさなくてはなりません。

3:名義貸しの禁止

職業安定法の第三十二条の十に、「有料職業紹介事業者は、自己の名義をもつて、他人に有料の職業紹介事業を行わせてはならない」と定められています。これが名義貸しの禁止の根拠条文となります。

例えば、A人材紹介会社が免許を取得し、無免許のB会社に権限を渡して人材紹介を行った場合は法第64条第3号に該当し、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられる場合があります。

業務委託契約と労働契約の違い

そもそも、業務委託契約と雇用契約の概要や違いを理解していない方も少なくありません。各契約の特徴や違いを確認してみましょう。

・労働契約とは

使用者と労働者の合意をもとに交わされる、労働条件に関する契約を労働契約(雇用契約とほぼ同じ意味)と言います。労働契約のもとで働く労働者は、労働基準法により守られる点が特徴です。

・業務委託契約とは

業務委託契約とは、企業など発注者と仕事を請け負う受託者の間で交わされる契約です。正しくは、請負契約と委任契約、準委任契約に分類されます。

簡単に説明すると、請負契約は成果に対して報酬を支払うもの。委任契約は法律行為を委託すること。準委任契約は法律行為以外の事務処理などの委託を行うものです。

業務委託契約には労働基準法が適用されない点が大きな違いとなります。つまり、業務委託で請け負う人は労働者のように労働時間が決まっておらず、最低賃金も適用されませんし、有給休暇や時間外手当の支給もありません。

なぜ人材紹介の業務委託が増えているのか

増えていくグラフライン

違法性が高いにも関わらず人材紹介の業務委託が増えている背景には、人材紹介業が労働集約型の事業モデルであることや、業務委託の自由度の高さなどが挙げられます。

人材紹介業のリソース不足

人材紹介事業で起業する人は増加し続けていますが、人材紹介は労働集約型の事業モデルのため、リソース確保が必要不可欠です。継続的に売上を上げるためには、両面型であればRAとCAの人員を揃えて、企業と求職者を両軸で増やし、管理し、マッチングを促さなくてはなりません。

どんなに魅力的な求人、または求職者を多数抱えていたとしても、マッチング先がなければ売上につながりません。求人と求職者の集客に成功していても、マッチングを促す人員や仕組みが整わなければ、やはり事業継続は難しいのです。

また、雇用契約のあっせんが成立して紹介手数料が入金されるまでのタイムラグを考えると、起業後すぐに多くの社員を直接雇用するには経費の観点で難しい場合が多いでしょう。これらを考慮すると、低コストで人的リソースを確保できる、業務委託の活用に注目が集まるのも自然な流れといえます。

業務委託の自由度の高さ

業務委託は労働基準法が適用されないため、「使用者から指揮命令をされない」「労働時間の管理もされない」という点が特徴です。働き手の視点で考えると、自分の自由な時間に好きな手法で仕事を進められて、成果が直接報酬に結び付きやすい点に魅力を感じやすいと考えられます。

本業がある人でも、隙間時間にきちんと面談ノルマをこなしてマッチングさえ実現できれば報酬を得られるため、労働時間を管理される労働契約よりもメリットがあると感じるのかもしれません。

その他人材紹介業のトレンド情報については、以下で詳しく紹介しています。

人材紹介の市場規模は?派遣との比較、コロナ後の動向、最新トレンドを紹介

実際に募集されている人材紹介の業務委託求人とは

職業選択の様子

実際に「人材紹介 業務委託」とネット検索すると、たくさんの募集が見つかります。どのような仕事内容、報酬体系で募集されているのか、例としてご紹介します。

例1:WEBエンジニアの紹介

システムエンジニア、開発エンジニアの案件を保有する企業に知り合いのWEBエンジニアを紹介する仕事。紹介したエンジニアの方は、業務委託契約でフリーランスとして稼働をする。

エンジニア1人紹介あたり2万円で、働き時間や場所は自由。

人材紹介の営業を業務委託で募集しているという求人ですが、そもそも紹介したエンジニアも業務委託で働く内容となっていました。人材紹介と記載してあっても、有料職業紹介の免許を持っていない可能性もあるので、応募する際に「有料職業紹介事業許可番号」を確認すると良いでしょう。

また、紹介したエンジニアが業務委託契約で働くと記載がありますが、実態として労働者と同等の働き方をしていれば、労働者のあっせんとみなされる可能性もあります。こういった募集は、応募時に詳細確認することをおすすめします。

例2:完全リモートワークの人材紹介

人材紹介や派遣の成約に関わる業務をはじめ、企業開拓や面接・採用に関わる仕事。人材紹介で成約すれば、成果報酬の50%が支払われる。

人材紹介業の経験者であれば、完全リモートワークでできる仕事として募集されています。企業や求職者との面談や仕事の日時は自由ですが、報酬は採用決定したタイミングのみです。会社員で人材紹介業を行うよりも自由度が高い反面、完全成果報酬のため注意が必要です。また、本記事でご紹介した通り、名義貸しにあたらないか確認がとれると安心でしょう。

業務委託を活用したいときの相談先

業務委託の人材紹介は違法性が高いと理解したものの、利便性を考えると業務委託のパートナーに仕事を依頼したい方もいるでしょう。適法に事業を運営するためには、個人で判断せずに最寄りの労働局に問い合わせることをおすすめします。

一般的に、職業紹介事業に関する窓口は労働局、労働者の賃金や労働条件などの問い合わせは労働基準監督署となります。

人材紹介と業務委託に関するQ&A

Q&AQ&A

最後に、人材紹介と業務委託に関するよくある質問をQ&A形式でまとめます。

Q.リファラル採用は職業あっせんにつながりますか?

リファラル採用とは、社員の知り合いを自社に紹介して就職につなげる方法です。リファラル採用に協力してくれた社員に何らかのインセンティブを与える場合がありますが、賃金として支払う場合は適法となります。ただし、リファラル採用の概要や報酬に関するルールは、就業規則などに記載し、社員へ周知するようにしましょう。

Q.業務委託をあっせんする際に免許は必要ですか?

労働者ではなく、フリーランスや副業者など業務委託で働く人をあっせんして報酬を得ることは禁止されていません。労働基準法および職業安定法で禁止されているのは、労働者の雇用契約のあっせんのみです。

ただし、業務委託契約とは名ばかりで、実態はほぼ労働者と同じ扱いをしている場合は、雇用契約のあっせんと解釈される可能性は0ではないでしょう。

Q.業務委託やフリーランスに依頼するときの注意点はありますか

業務委託のフリーランスなどに仕事を依頼するときは、偽装請負にならないよう注意が必要です。偽装請負とは、書類上は請負(委託)契約を結んでいるにも関わらず、実態として労働供給事業または労働者派遣となっている違法行為を指します。

労働基準法が適用される労働者であれば、労働時間の上限があり、有給休暇の付与や時間外手当の支給、さらには社会保険や労働保険で保護される側面があります。しかし、契約上は業務委託契約と言い張って、注文者である企業が責任逃れをする行為は違法とされます。

業務委託相手に適法な発注をしていたつもりでも、取引中の対応を間違えると偽装請負になり得えます。不安な方は労働基準監督署や社会保険労務士など、専門家に相談すると良いでしょう。

まとめ

書類調査の様子

人材紹介の仕事を業務委託のパートナーに依頼する場合は、名義貸しや無免許での人材紹介など違法行為とならないよう注意が必要です。フリーランスや副業者などと業務委託契約を結ぶ場面は増えていますが、正しい法律を理解していない方も散見されます。うっかり法違反とならないよう、専門家への相談や、公的な窓口への問合せをしながら事業運営を行いましょう。

多すぎる業務量を減らしていきたい、効率化していきたいという人は、求人獲得という膨大な仕事を不要にする求人データベースの活用もおすすめです。以下の記事で詳しく説明しているので、参考にしてください。

【具体例付き】求人データベースとは?メリット・デメリットも解説

circus AGENTは、毎月1,500件以上の新規求人、常時40,000件以上の求人が利用できる求人データベースサービスです。人材紹介会社立ち上げ期でも、担当がつき収益化サポートも受けられるため、創業期から成長期まで長く活用できます。

この機会にぜひ資料をダウンロードしてみてください。

circus AGENTのサービス内容がわかる
資料をダウンロードする